〈白雲〉進水式
〈白雲〉進水式の様子
命名〈白雲〉!
森戸神社から出張いただいた神職 2010年9月4日、葉山新港で新レスキューボート〈白雲〉の進水式が行われました。
昨年(2009年10月8日)、相模湾の沿岸地域に甚大な被害を与えた台風18号により、艇体とエンジンに深刻なダメージを被ったメイン・レスキューボートの〈リバティ〉の調子が思わしくなく、レスキューボートとして使用するには不安要素が多すぎると判断した本学ヨット部は新レスキューボートの榊を受け取る3年榊原導入に踏み切りました。
新しいレスキューボートとして選ばれたのは、トルネード・ボート社(デンマーク)製の「ハイパフォーマンス5.6m」というモデル。セーリング競技のコーチボートとして世界的に人気の高いタイプです。荒れた海面での走破性が高く、静止安定性にも優れ、コックピット内のスペースも広いことなどの理由により、このボートが採用されました。搭載エンジンはヤマハ発動機の4ストローク船外機80馬力祈祷にも気合いが滲む久保田GM代行「F80B」。ラバー部分のカラーリングは、本学のスクールカラーである紫紺に近いネイビーブルー。
欧米でR.I.B.(Rigid Inflatable Boat)と呼ばている、FRP製の硬質なハル(艇体)を有するこのタイプのラバーボートは、コーストガードやネイビーなどでも採用されている極めて信頼性の高い艇種で、周囲にエアの入ったラバーが装備されているため、レスキュー時にレース艇に近づいたり、救助のためにセンターコンソールの中にお札を奉納する坂上主将落水者に近づくような場合にも、ラバー部分が緩衝材の役目を果たし、安全にレスキュー活動を行えるというメリットがあります。
艇名は、現役部員たちの協議により〈白雲〉と命名されました。本学校歌の唄い出し『白雲なびく駿河台~』からの引用です。ちなみに、本学レスキューボートの歴代艇名を遡れば、〈リバティー〉(ヤマハUF-21)←〈ボイジャー〉(和船テンダー)←〈夕鶴〉(和船テンダー)となっており、今ひとつ脈絡がはっきりしない流れとなっております。進水式に同席した下里OB会長に歴代レスキューボートの艇名について聞いてみましたが、〈夕鶴〉以前の状況は不明とのこと。この辺りの事情に詳しい方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。
厳かにおこなわれた進水式
葉山新港に浮かんだ〈白雲〉 進水式は、2010年9月4日午前9時30分より、葉山新港の敷地内で。関東インカレの会場となる森戸海岸の横にある葉山郷総鎮守・森戸大明神(森戸神社)から神職にご出張いただき、古式に則った進水式が厳かに執り行われました。
写真に写っている出席者の顔が、一様に不機嫌そうに見えるのは困ったことですが、これは神妙な顔つきをしているつもりが、慣れないのでこうなっ部員に曳かれてスロープから降ろされる〈白雲〉てしまっただけで、決して不機嫌なわけではなく、むしろ上機嫌であることは言うまでもありません。
神職の祝詞が終わった後、部員を代表して3・4年生が榊を供えて海上安全を祈願。全ての祈祷が終了してから、坂上主将がコックピットに上がり、森戸神社からいただいた海上安全祈祷のお札をセンターコンソールの中に奉納しました。
部員たちに曳かれた新レスキューボート〈白雲〉は、葉山新港のスロープからいよいよ水面へと向かい、まっさらなハルが葉山の海水へ。進水の舵を取るのはもちろん主将の坂上。サポートとして副将の桐生、そして新レスキュー導入に尽力した久保田GM代行の3人を乗せた〈白雲〉は、葉山新港の港内に静かに浮かびました。
早速試運転を兼ねた処女航海です。定員8慣らし運転の低速走行に、生ぬる~い空気となった艇上名いっぱいの乗員を乗せた〈白雲〉は、残暑厳しい晴天の海に走り始めました。本来なら「ヒャッホーイ!」と奇声を上げて、フルスロットルでぶっ飛ばしてみたい気分ですが、ここしばらくは回転数を押さえた慣らし運転をする必要があり、勇んで乗り込んだ部員たちは予想外の低速運転に肩すかしを食らい、悶々とした思いを抱えて陸に戻りました。
戦前の創部以来、死亡事故ゼロという本学ヨット部の伝統を受け継ぐために、この〈白雲〉の登場は何より心強い力となるはずです。しかしながら、この誇るべき伝統の継承において最も大切なことは、部員各々のシーマンシップの向上であることを我々は肝に銘じなければなりません。この、頼りになる相棒のポテンシャルを最大限に引き出すために、我々はシーマンシップの向上に日々努力を惜しみません。